「このワインは年代もので」なんて台詞を聞いたり、リカーショップで10年、20年もののワインの値段が一桁違うのを目撃したり…なんてことがあると、ワインは長く寝かせればどんどん美味しくなるんだと思ってしまいます。
しかし、以前フランスのシャトー見学に行ったとき、保管されている一番古いワイン(1881年!)を見かけてどんな味わいなのか尋ねたら、「そのワインは時間が経ちすぎてもう飲めないよ」と言われてしまいました。ワインにも寿命があるのか!と知った瞬間でした。
ワインの寿命、最も美味しく飲める”飲み頃”はいつ?
実は人間と同じように、ワインにもライフサイクルがあります。誕生してから若々しい青年期を経て、成熟して美味しさのピークを迎え、やがて衰退し寿命を迎える。そのサイクルの中でワインの香りや味わいはどんどん変化し、様々な顔を見せてくれます。
だとすると、どの時期のワインが一番美味しい”飲み頃”で、それはどのくらいの時間をかけて熟成したものなのでしょうか。
答えは「ワインによって異なる!」です。ズバリ答えが知りたいところですが、実際ワインのライフサイクルの長さは、ぶどうの品種やヴィンテージによって変化してしまうのです。ただし、長く熟成させることで美味しさが増すワインを見分けることはできます。そのヒントは”タンニン”にあります。
ワインの熟成を支える”タンニン”
ワインは醸造所から出荷された後も、ボトルの中で熟成を続けます。熟成はワインに含まれるいくつかの物質が化学変化を起こすことにより進むと言われていますが、その代表的なものが”タンニン”です。
タンニンはもともと渋み成分なので、タンニンをたっぷり含む若いワインは少し渋く口の中がざらつく感覚を覚えます。これが苦手でワインに馴染めない人も多いですよね。
しかし、熟成の過程においてはワインの酸化を防ぎ、まろやかさを演出してくれる立役者です。タンニンにより、長い年月をかけてまろやかが増して口当たりの良いワインに成長するのです。
長期熟成に向くワインとは?
ワインの熟成にはタンニンが重要な役割を担っている…ということは、タンニンを多く含むワインほど長期熟成のポテンシャルが高いことになります。
種類でいうと赤ワイン、ぶどうの品種でいうとカベルネ・ソーヴィニヨンやシラーなど、濃厚さと力強さを兼ね備えたものが長期熟成タイプにあたります。これらのワインは数十年をかけて完成された味わいに近づきます。
白ワインは赤ワインよりもライフサイクルが短いものが多く、あまり長期熟成には向きません。ただ、中にはフランスの「ソーテルヌ」のように、長期熟成可能なものもあります。このワインは熟成すると、蜂蜜のように甘くとろりとしたデザートのような味わいを楽しめますよ。
ワインと人生
このように、ワインは単に長く熟成させればいいわけではなく、ライフサイクルを見極めて、最も美味い”飲み頃”を狙うのが大切です。若くして花開く人もいれば大器晩成型の人もいる・・・ワインと人生はとてもよく似ていますね。