飲食店のメニュー表に「焼酎・泡盛」と書かれていることがあります。
焼酎も泡盛も名前は知られているお酒ですが、この2つの相違点や共通点はあまり知られていません。
実は焼酎と泡盛には、密接な関係があります。
約600年の歴史を持つ泡盛は、日本最古の蒸留酒と言われています。
歴史ある泡盛は、焼酎のルーツとされているのです。
では、この2つはどのように造られているのかを、米焼酎と泡盛を比べて説明します。
泡盛の原料
どちらも原料はお米です。
泡盛の多くは、インディカ米と呼ばれるタイ米を使用しています。一方、米焼酎は日本米(ジャポニカ米)を使っています。
泡盛には、元々その土地で採れた米や雑穀などを原料として使っていました。
しかし、明治時代から外国産の米が使われるようになり、昭和初期以後はタイ米が主に使用されるようになりました。
タイ米は泡盛造りに適した特徴を持っています。
まず、水や酵母を加えてアルコール発酵させる際、日本米よりも温度管理がしやすいというメリットがあります。
また、蒸らしても米粒同士がくっつかず作業がしやすい点も特徴です。
さらに、日本米よりも糖質が多く含まれているので、アルコールを多く収量できます。
タイ米独特の風味も泡盛造りに適しています。
単価が安い点もメリットの一つでしょう。
お酒造りに欠かせない麹菌と酵母
酵母とはいわゆる微生物の一種で、アルコール発酵に欠かせないものです。
酵母はブドウ糖を食べて、アルコールと炭酸ガスに分解します。
この酵母の働きを発揮させるためには、米に含まれるデンプンをブドウ糖に変える「糖化」という作業が必要です。
糖化は、蒸した米にカビの一種である麹菌を撒く作業です。
こうすることで、デンプンはブドウ糖に変わります。
泡盛と焼酎では、使用する麹菌が異なります。
泡盛には「黒麹菌」のみを使わなければなりません。
それ以外の麹菌を使うと、泡盛と名乗ることができません。
一方、焼酎では白麹菌をよく使用します。また、黒麹菌や黄麹菌を使うこともできます。
白麹菌は黒麹菌の突然変異でできたもので、以前は焼酎造りにも沖縄から伝わった黒麹菌が使われていました。
黒麹菌は糖化の作業の際にクエン酸を作ります。
クエン酸の持つ強力な酸の力でもろみの腐敗を防ぎます。
高温な気候の九州地方で焼酎造りが発展したのは、黒麹菌のおかげだと言えます。
しかし黒麹菌を使うと道具や蔵の中、作業着が黒ずむという理由から、白麹菌が発見されて以降、焼酎に黒麹は次第に使われなくなりました。
全麹仕込みと二次仕込み
米麹は、蒸した米に麹菌をまぶして糖化させたものです。
この米麹に水と酵母を加えたものを、「もろみ」と言います。
もろみを発酵させることで、アルコールが発生します。
そのため、もろみ作りは酒造りにとって重要な工程です。
焼酎と泡盛のもろみの作業には、大きな違いがあります。
米焼酎の場合、まず「一次仕込み」として、米麹に水と酵母を加えてもろみを作ります。
次に「二次仕込み」として、蒸した米と水を加えて発酵させます。
一方、泡盛の場合は、一次仕込みのみでもろみを完成させる「全麹仕込み」です。
気温と湿度の高い沖縄では、もろみの腐敗を防ぐために二次仕込みを行わない手法が生まれたと言われています。
もろみを蒸留する理由
もろみの状態ではアルコール度数が低く、ドロドロの米麹が残った状態です。
そこで、もろみとアルコールを分離させるために、加熱します。
この作業を、蒸留と呼びます。
アルコールの沸点は約78度のため、水分や米麹よりもアルコールのほうが早く沸騰します。
先に沸騰して蒸気となったアルコールを集めて冷やしたものが、泡盛や焼酎になるのです。
泡盛と焼酎は酒税法上は同類
酒税法では、泡盛も焼酎も「焼酎乙類」に分類されます。
焼酎乙類とは、もろみを一度だけ蒸留したものです。
対して、何度か蒸留をくり返した焼酎は「焼酎甲類」に分類されます。
梅酒や果実酒に使う「ホワイトリカー」のことです。
1度のみ蒸留する「焼酎甲類」は、原料の独特な風味や特徴が残ります。
一方、蒸留をくり返す「焼酎乙類」は、原料の風味やクセがなく純粋なアルコールに近い状態です。