お酒は、同じ原料を使用しても造り方によって異なるお酒になります。
例えば、日本酒と泡盛はどちらもお米から作られます。
しかし、作業工程の違いにより、日本酒と泡盛に分かれます。
泡盛はもろみを蒸留する「蒸留酒」、日本酒はもろみを蒸留しないで搾る「醸造酒」です。
蒸留酒は、度数が高く、糖分・アミノ酸・脂肪・ミネラルなどのいわゆる不純物を含んでいません。また、温度や湿度の影響を受けにくく常温で保存が可能です。
蒸留酒には泡盛のほかに、焼酎、ウイスキーなどがあります。
一方、醸造酒は、蒸留酒よりも度数が低く、糖分・アミノ酸・脂肪・ミネラルなどを多く含みます。これらが品質に影響を及ぼすため、保存する際は温度管理など注意が必要。
醸造酒には日本酒やビールなどがあります。
麹菌の違い
日本酒と泡盛づくりに欠かせない麹菌。
いろいろな種類の麹菌がありますが、日本酒と泡盛では使われる種類が異なります。
泡盛に使われるのは「黒麹菌」のみです。
酒税法で黒麹以外を使ったものは泡盛と認められません。
日本酒には「黄麹」がよく使われます。また、焼酎に使われる「白麹」や「黒麹」を使用してもよいとされています。
作業工程の違い
泡盛造りには大きく分けて6つの工程があります。
- 洗米:原料の米についている糠を水で洗う
- 浸漬:洗ったコメを水に浸す
- 蒸米:米を蒸してデンプンを糖化しやすくする
- 製麹:蒸した米に黒麹を撒き、デンプンをブドウ糖に変えて米麹をつくる
- 仕込み:米麹に水と酵母を加えて液体状にし、もろみをつくる
- 蒸留:もろみを一度加熱し、アルコールを分離させる
日本酒造りには泡盛よりも多くの工程があります。
- 精米:米をデンプンのみの白米にするため、脂肪やたんぱく質を取り除く
- 洗米
- 浸漬
- 蒸米
- 製麹
- もと造り:蒸米・米麹・酵母菌・乳酸菌・水を入れて、日本酒の元となる酒母(しゅぼ)をつくる
- 仕込み:酒母に麹・蒸米・水を入れて、もろみをつくる
- 搾り:もろみを絞って酒と粕に分ける
- 火入れ:酵母の活動を休止させて変質を防ぐため、約60度で低温殺菌する
日本酒と泡盛には同じ作業工程が多数ありますが、その内容が異なる点があります。
例えば、洗ったコメを水に浸す「浸漬」では、日本酒の場合、最適な麹を作るために秒単位で調整が必要ですが、泡盛ではそれほど調整しません。
「製麹」の工程では、日本酒の場合、温度を高くして行います。これは、米のデンプンを分解する酵素を多くつくるためです。
一方、泡盛は温度を徐々に下げながら麹をつくります。黒麹には温度を下げるとクエン酸が発生する性質があるためです。クエン酸には雑菌による腐敗を防ぐ働きがあります。
「仕込み」に関しては、泡盛は一回のみの「全麹仕込み」、日本酒は3回に分けて行う「三段仕込み」です。
酔い方の違い
泡盛のアルコール度数は30度、一般的な日本酒のアルコール度数は15度です。
度数が高いほうが酔いやすいと考える方が多くいますが、実は日本酒のほうが酔いやすいと言われています。その理由は、醸造酒と蒸留酒の違いにあります。
日本酒などの醸造酒は、原料の糖分やアミノ酸、脂質などが残っています。
一方、泡盛などの蒸留酒は、これらの不純物が取り除かれています。
不純物が入っていない純粋なアルコールのほうが、肝臓に負担をかけずにアルコールを分解できます。
つまり、不純物のない泡盛(蒸留酒)のほうが日本酒(醸造酒)よりもアルコールが分解されやすく、二日酔いしにくいと言えます。